ご飯は幸福の素 寅福とはごはんやであり
それも頑固な職人のような
こだわりのご飯をだす店なのである。
朝早くから仕込みが始まる。
米はどこどこ、水はどこどこ
とぎ方、炊き方、蒸らし方
なにからなにまで決まっている。
それを大きな黒いかまどで、炊き上げる。
それはまるで大仕事。
昭和の初め、白いご飯が貴重だった頃
おいしいご飯を
お腹いっぱい食べさせたいと
子をもつ母なら、誰でも思っていた。
下町、浅草生まれの白い割烹着のにあう母も
まちがいなくそう思ったに違いない。
働きものの母は、それが講じ
昭和三十年、ごはんやを出す。
おいしいご飯とおいしいおかず。
毎日食べても飽きない日々の味。
悲しい時もご飯を食べれば元気になれる。
うれしい時はもっとうれしくなる。
「ご飯は幸福の素」これが母の口癖だった。
母の名前は、寅。
そこで店の名前は、大かまど飯 寅福。
そして平成十二年 私は母の意志をそのままに
この店を継ぐ二代目となった。
寅福 二代目 寅二